死ぬ直前

昨年10月から毎月1回受講している「生と死を考える」講座の最後の授業が昨日行われました。全6回の6回目です。1~5回目については以下のタイトルをクリックしてください。
1 菊池寛賞の理由
2 尊厳死したいなら
3 日航機墜落事故
4 医療消費者
5 生と死を考える講座5回目

さて、昨日の6回目の講座は、「自宅で安らかな死を」と題して、在宅ホスピス医が講義されました。この人の存在は、母がまだ生きていて、私がホスピスについて調べていたときにネットで存じ上げていました。私と同じ高校の出身だったので、特に覚えています。昨日、機会があれば講義後に声をかけたかったのですが、お忙しそうだったので、諦めました。

お父様を肝臓癌であっという間に亡くされて、末期医療のお粗末さを身を持って体験し、緩和ケア医療に携わることを考え始めたそうです。もともとは麻酔科の医師で、専門的にも、緩和ケアで使う薬のことなどには詳しかったので、自分に向いていたそうです。ただ、麻酔科は患者と直接話したりすることは一切しないので、緩和ケアを始めて最初のころは患者さんとコミュニケーションをとることに苦労したそうです。

でもそれから8年くらい、死に際の人たちに接し、多くの人を看取ってきたわけで、人間が死ぬ瞬間というのにかなりの回数立ち会ってこられていて、昨日はスライドの中で死ぬ直前の人間の様子を言葉で表現されていました。誰もがこうなるというわけではないのでしょうが、たいていの人は病気や老衰の場合こうやって死んでいくのでしょう。

死の数分前~死まで



水からあげられた魚のような呼吸になる。一度か二度長い間隔をあけた呼吸に続いて、最後の呼吸がみられ、全く反応がなくなる。

とのことです。でも私の母の場合は、たしかに水からあげられた魚のように、ぱくぱくと口を大きく開けたり閉じたりして一生懸命呼吸をしていたのですが、そのままだんだんと口の開け閉めが小さくなっていって、「あれ?もう息をしていないように見える」と思ったのが私が気づいた母の生と死の境でした。だから最後の呼吸には気づきませんでした。

死の兆候というのも紹介されました。
死の2週間から1週間前の体の変化だそうです。
血圧が下がる、心拍数が増えたり減ったりする、体温が上がったり下がったりする、汗を多くかく、皮膚の色が青ざめたり、青白くなったりする、呼吸が不規則になる、痰が増える、眠っていることが多くなる、食事をせず、水分をわずかに摂るのみとなる。など。

体調に波が出てきて、一見元気になったようにも見えることがあるのだそうです。母の場合は、血圧、汗、眠っていることが多くなる、水分をわずかに摂るのみとなる、などが最後の1週間くらいに見られた死の兆候だったかと思います。死の当日は、足先が青ざめていたようにも思います。痰や呼吸で苦しむことは幸いなかったけど、痛みは本当にひどかったです。でもこのホスピス医は、呼吸の苦しさが一番かわいそうと言っていたので、母はその点では良かったと思います。

老衰も含めて末期になってくると、人間は枯れていこうとするので飲み食いがあまりできなくなるのは自然なことであるのに、家族は元気になってもらおうと、食べさせたり飲ませたりしようとするそうです。胃に直接流動食を流し込む処置(いろう)は、治る人なら必要だけど、もう枯れるだけの人にとっては虐待に近いそうです。でも「いろう(漢字が・・・)」は一種の流行だそうです。点数が高いので病院はこれをしたがるのだとか。

人間が最も安らかに死ぬということは、きれいに「枯れて」いくことだ、とこの医師は言っていました。腹水などがたまってきても、呼吸を圧迫したりしない限りは無理に抜いたりせずにいると、食べたり飲んだりできなくなったときに、腹水に豊富に含まれる養分を体が使い始めて、しまいにはお腹はぺちゃんこになるそうです。母も少し腹水があった時期もありましたが、最後は本当にきれいに、痩せてミイラのようではありましたが、お腹はぺちゃんこになりました。抗癌剤やモルヒネの副作用で便秘にもそうとう苦しんだのですが、死の数日前から便通もかなりあり、母の体は本当にきれいに枯れることができたと思います。手先や足先のむくみは取れなかったのですが。。。

この人は在宅専門のホスピス医なので、特に在宅で安らかに死ぬということについて話されました。在宅で看取る時には、定期的に診てくれる医者が必要であると、ちょっと宣伝かとも思いましたが、おっしゃいました。つまり、家で看ていた人の呼吸が止まった時、定期的に診てくれている医者がいる場合には、その人に連絡して死亡確認をしてもらえばいいけど、呼吸をしていないといって救急車を呼んだりする人がいて、救急隊が救急病棟に運ぶと、呼吸の止まった人が老衰であろうと末期がんの患者であろうと、救急医療チームは心臓マッサージをしたり、とにかくできることを一生懸命やってしまい、結局「安らか」とはかけ離れた死に方をする上に、高額の医療費を請求されてしまう、ということでした。救急隊が到着した時にすでに死亡している場合は、救急隊は警察を呼んで帰っていき、どうみても病死なのに変死ということで、家族の事情聴取などが行われるそうです。だから「安らかに」逝ってもらいたいという気持ちがあるなら、そのために必要な知識をもって行動すべき、ということをこの医者は言いたかったのだと思います。

とはいっても、24時間365日対応の在宅ホスピス。スタッフ不足だと思います。このように犠牲的な仕事に関わっている医療従事者には本当に頭が下がります。ご自分の家族もかなり犠牲にされていることと思います。ただでさえ医者不足で、若者の医学部離れが「仕事がきつい」ということなので、これからなおさらスタッフが足りなくなるのではないかと思ってしまいます。医学部に入れる頭脳がある人たちに、命を尊ぶ心と、激務に耐えうる体力も備えられますようにと願います。

あ、それから癌という病気は、死ぬまでに時間がある病気だとおっしゃったのが印象的でした。心筋梗塞などに比べた場合、ということだと思います。ほかにも突然死や事故死など、死の準備ができない死に方がたくさんあります。だからだれもが願う「安らかに死ぬ」ということを、癌の場合はできやすい。ただ、人は自分の力で安らかに死ぬことはできない。痛みをとったり、苦痛をとったりという医療の力を借りて安らかに死ぬことができる、と、おっしゃっていました。




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Commented by CHATTY at 2008-03-19 01:33 x
マーサリポート「生と死を考える」講座を有難う御座います。人間の「安らかな死」を考えるとき、どうしても母の事と結び付けてしまいます。むごい事ですが痛み苦しむ母を私はどうしても逝かせたくありませんでした。姉は「こんなに苦しんでいるのだから解放させてあげよう」(積極的治療はもう止そう)と意見の相違がありました。今、考えると私のほうが残酷だったのかもしれませんが、今でも諦められない気持ちでいっぱいです。

そして残念と言うか無念なのが、母の死の境をきちんと見取ることができなかったことです。その時、私は母の横の簡易ベットでウトウトしていました。看護婦さんがパタパタと入ってきて、「ご臨終です」(最終的な臨終は後から呼び出された主治医によってされましたが)と言った事です。どうして私は眠ってしまったんだろうって未だに悔やまれます。。。昨年は、私の周りで本当に多くの方が亡くなりました。。。。。どのような亡くなり方が一番しあわせなのか分かりません。が、くちゃくちゃな婆さんになった母が見たかった。もっと、おばさんになった私を見て欲しかったと思います。
Commented by martha2nd at 2008-03-19 22:17
☆CHATTYさんへ☆
残酷ということはないですよ。お母様も病気と闘う意志があったのでしょう?自分を責めるのはよくないですよ~。CHATTYさんの熱心さがあったから、漢方薬とかもよく聞いて、一時は癌が小さくなるまでになったのですよ。私も母のおばあちゃんになった姿を見たかったとも思います。でもうちの母は若く見られるのが好きだったし、歳をとるたびに憂いていたので、母は若い(といっても60代ですけど)ままの姿で皆の思い出に残るので、うれしいかもしれません(笑)。私は諦めはついているけど、膵臓癌への憎しみとか、病院の対処への疑問とか、悔しさとかは、まだまだ拭えません。
Commented by yoko at 2008-03-22 11:55 x
死ぬ前に「水からあげられた魚のような呼吸になる。」
たしかに母もそうでしたが、母の場合この状態が4日ほど続いたのですよ。
しかも高熱を出して、目は開いたまま。顔は腫れて・・・。
見ていてとても辛かったです。
よく、眠るように息を引き取った。安らかだった・・・。
とか聞きますが、母の場合当てはまりません(泣
闘病中の痛みは無かったようですが
人間、死ぬ時はこんなに苦しむのか・・・
と思いました。

なかなか忘れられるものじゃないですね。
Commented by martha2nd at 2008-03-22 22:55
☆yokoさんへ☆
最愛のお母様の苦しむ姿、見るのは本当に辛かったことと思います。私の母は最期よりも、闘病中の痛みがひどかったので、病気と果敢に闘おうとしている母を見るのが辛かったです。
このホスピス医が言うには、人は1人では安らかに死ねないということでした。もちろん寝ている間に亡くなる方もいますが、ホスピス医がいうことですので、癌を含む難病の人たちのことをおっしゃっていたのだと思います。癌などの病気の人が安らかな最期を迎えるためには、痛みや息苦しさを取り去ってあげるという手伝いが必要なのだと。点滴も、最期が近い人には天敵で、浮腫みを促進させてしまうそうなのです。終末期や看取りについて、より多くの医者に勉強してもらいたいと思いました。
Commented by kokoro3 at 2013-04-30 13:26 x
marthaさん、沢山の気づきを本当に感謝します。
これからもっと広げて考えられるように今から気持ちをオープンにしようと思います。
ところで、今までの回がクリックしても見れない状態なのですが、どうしてかな?
Commented by martha2nd at 2013-04-30 23:57
☆Kokoro3さんへ
すみません。リンク先がカフェブロ(もうサービス停止したブログサービス)でやっていたブログなので。。。一応内容はエキサイトに引っ越してきたんですが、リンクの貼り直しをしていないんです。このページは非常にアクセス数が多いにもかかわらず、、、、。そのうちちゃんとリンクの貼り直しをしますね。とりあえず、下記にURL載せておきます。
http://oldeml.exblog.jp/18782781/
http://oldeml.exblog.jp/18780608/
http://oldeml.exblog.jp/18754873/
http://oldeml.exblog.jp/18781003/
http://eml2.exblog.jp/6810733/

by martha2nd | 2008-03-18 13:03 | 神・キリスト・聖書・十字架 | Comments(6)

クリスチャン。在宅翻訳やってます。夫と文鳥との生活に奇跡的な誕生をした息子も加わり奮闘しています。


by martha2nd