中村桂子さん

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最近この本を読みました。出版社は「理論社」です。

ほとんど見ていないのですが、Eテレの「視点論点」という10分番組がありますね。毎日いろいろな分野のそれなりの方が、ご自身の視点論点を話す番組です。ちょうど生命科学者の中村桂子さんがスピーカーのときの、それも再放送を、偶然半分くらい見ました。

そのときに一番心に残ったのは、この方は戦前の生まれで、「第二次世界大戦の敗戦が原点となりその後の日本の復興があったように、今の日本にとっては東日本大震災が原点となるのではないか」というようなことをおっしゃっていたことです。

実は大学を出て少しして勤めた小さな出版社で(まあ、この話には全然関係ないけど、そこで夫と出会ったわけですが)、出版社の社長が中村桂子さんをインタビューする仕事があり、私はそのインタビューに立ち会ったことがありました。私は生命科学やゲノムの研究などは人間が神になろうとする驕りではないかという偏見があって、そのときあまり中村さんの語ることに耳を傾けられなかったような気がします。きっととてもいいことをおっしゃっていたはずなのに。

前置きが長くなりすぎましたが、インタビューから20年近くたって、中村さんをテレビでお見掛けして、彼女の言葉が心に残っていたわけです。そこに、友人に連れられて言った古本屋さんでこの本を見つけて、迷わず購入したというわけです。

友人が読んだら貸してというので、戻ってこなかったときのために(笑)、この本の中からも心に残った箇所をここにメモしておこうと思います。

中村さんは胎児の出生前診断について次のように考えていると述べられています(P160)

「出生前診断も開発されていますが、すべての障害や病気があらかじめわかるわけでも、防げるわけでもありません。生命や生きものの世界は、工業製品と違って、設計図通りの完成品を作り、こわれたら部品を交換すれば修理できるというものではないのです。
 そもそも遺伝子には、必ず変異が起きます。人には、平均十個くらい働きの悪い遺伝子が入っているのが普通だと言われています。ある意味では、だれもが欠陥をもっているのです。ただ、障害や病気がたまたま現れた人もいれば、遺伝子には欠陥があっても表面には表れない人もいるのです。
 遺伝子の変異が、個体をつくれないほどのものなら、赤ちゃんは生まれてきません。生まれてきたということは、人として存在できる力をもっていたということです。
 遺伝子ですべてが決まる、「悪い」遺伝子は取り除こう、という見方は、生物学の事実としてもまちがっていますし、人々のなかにある差別や偏見を助長してしまい、社会のあり方としても危険ではないでしょうか。
 障害や病気をなくすように技術を使う方向ばかりではなく、障害や病気のある人も暮らしやすい社会の仕組みをつくり、差別をなくすという方向に人々の知恵や技術を使うのが、人間社会の選択であるはずです。この視点がないままに生殖技術や遺伝子診断が進むと、とんでもない世の中になります。」

そして科学全般については次のように語っているということです(P188)

「みんな誤解しているのは、科学はどんなことにも正解を出してくれると信じていること。本当は、科学というのは答えを出す学問ではなくて、問いを探し、それを説明するいろんな素材を出して、それについてあれこれ考察していくもの。実は生命誌研究館のねらいも、一つはそこにある。つまり、「わからないことがいっぱいあるけれど、なぜかおもしろい。それが科学ですよ」と来館者に知ってもらいたいですね」


また、女性が研究したり仕事を持つことについても、
「職業をもつ、ということをあまり肩に力をいれずに考えることも大切と思います。家庭という言葉を仕事と背反する意味ととらえたり、職業をもつことで張り切りすぎたり、逆に女は損だという被害者意識を最初からもってしまったりするのは決して得にならないと、つねづね感じています。」

「どんな状況にも、メリットとデメリットがあります。そのメリットを見つけて上手に生かしていくこと、それが生き方じゃないですか」

と述べられています。(P194~195)

主婦であり母であり偉大な研究者である中村桂子さんの言葉から教えられることがたくさんあり、この本に出合えたことを感謝しています。

「視点論点」を偶然見ることができたことも感謝。

そのときの視点論点、こちらに書き起こしがありました。興味のある方はどうぞ。一億総活躍にも中村さんの視点から述べられています。
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by martha2nd | 2016-05-27 10:14 | 暮らし | Comments(0)

クリスチャン。在宅翻訳やってます。夫と文鳥との生活に奇跡的な誕生をした息子も加わり奮闘しています。


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