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凱旋

昨日の話です。
私が切迫流産・切迫早産で2ヶ月間入院していた病院に、エリの無事の誕生と順調な生育を報告しに行きました。駅から病院までの道は、凱旋そのものでした。

連休中ですがお世話になったチャプレンが当直でいらっしゃるということで、この日にお約束をしたのです。産科のスタッフの方々も、連休中で少なめではありますがいらっしゃって、特にとてもお世話になった看護部長さんがいらっしゃったのは嬉しかったです。ドクターとは会えませんでしたが、エリが歩けるようになったらまたお訪ねしたいと思います。

看護師さんたちもチャプレンも「エリ君、おなかにしがみついて頑張っていたよね。パパとママもよくがんばったね」と喜んでくれました。入院中ヒマだった私は、よく数独パズルをしていたのですが、あるときあまり見かけない看護師さんが担当で、胎児の心音を聞いて「今日はとてもご機嫌みたいね~。」と言い、その後おなかに向かって「生まれたらママがパズルを教えてくれるわよ」と話しかけました。私はこの看護師さん、私の状況何も知らないんだろうな、と思って内心苦笑していたのですが、去年11月に病衣をお返しに行ったときも、今回も、本当に嬉しそうにしていらっしゃったので、きっと私の状況を良く分かった上で、信仰によってあのような励ましをくださったのだなと今では思います。チャプレンによると、彼女はクリスチャンとのこと。

産科での挨拶を済ませ、チャプレンオフィスのほうに移って、数時間も話し込んでしまいました。チャプレンはエリと会えたことを本当に喜んでくださって、日本人ですが「You made my day.(あなたが私の今日一日をすばらしいものにしてくれた)」とおっしゃいました。

チャプレンはアメリカでチャプレンになるための勉強をされたのですが、当時よくNICUに顔を出していたそうです。ちょうど27週で生まれた小さな赤ちゃんがいたそうですが、なぜかこの子は絶対に助かると思ったそうです。ご両親や兄弟にその赤ちゃんがとても愛されているのがわかって、「この子は大丈夫」と思えたそうです。もちろん、どんなに愛されていても、病気や障害で亡くなる赤ちゃんもいるのですが、説明がつかないけど、その子は大丈夫と思えたのだそうです。そして私の転院の日の朝も、不思議と同じように「この子は助かる」と思えたのだそうです。

チャプレンが「NICUって、生命力とか命とか愛とかがものすごく凝縮されている場所よね。世の中に出てくると、そういうものがかなり薄まっているけど」とおっしゃったのが印象的でした。本当にそのとおりなのです。NICUには生きよう、生きようとしている命と、その生命力、そして親たちやスタッフたちの愛情が湧き出ているような、そんな雰囲気があるのです。エリの入院中、エリの容態に日々ハラハラしましたが、NICUの空気は心地の良いものでした。あの空間は、ある意味聖域です。

NICUと同じような空気がある病室がもうひとつあります。それはホスピスです。この病院はめずらしいのですが産科と緩和ケアがどちらもあります。オメデタの女性と生まれてくる胎児をケアする産科と、死が遠くない人たちが一日一日を大切に過ごす場所。後者は暗い場所のように思われるかもしれませんが、チャプレンは、「この人たちは半分死人のような状態なのではなく、今を最大限に生きているのよね」とおっしゃいました。本当にそうなのですよね、人間って自分の死が見えて初めて自分の生命を最大限に意識し、最大限に生きることができるのです。

母がホスピスに入ったときには、もう起き上がることもできず、声も出ず、端から見ると半分死人でした。でもあの状態で1週間以上生きていたのは、私たちには見えない母の内側で、命の炎が静かに燃えていたのだと思います。それは赤い炎ではなくて、高温の白く輝くような炎だったのではないかと思うのです。また私たち家族一人ひとりも、それまで以上に母(父にとっては妻、祖母にとっては娘、伯父にとっては妹)への愛を心のうちに強くしました。ホスピスの空気とNICUの空気が重なるのは、こういうところにあるのですね。

お忙しい中、何時間も私たちと話していてくださったチャプレンに感謝です。

病院を後にして、駅までの道を歩いていると、夫が以前の仕事仲間に遭遇。この人はこの近辺にお住いで、なんと私の転院の日の朝、夫が病院に駆けつけようとしていたときにも駅前でばったり会ったのだそうです。太いご縁がありそうですね^^  向こうもお子さんと奥さん連れでした。お子さんはエリと同じ学年です。4月生まれなのでかなり大きいですけど。

なによりも、エリをこの病院に連れてくることができたのは、本当に幸せでした。エリはこの病院の病院食のおかげで900グラム台までに成長することができたし、スタッフのケアや、祈りによって、転院直前まで命が保たれ、適切なときに転院することができたのだと信じます。

しかし、この方々を用いて全てを成し遂げてくださったのは主です。主イエスの御名をあがめます。
by martha2nd | 2009-09-24 00:10 | 息子の誕生後

クリスチャン。在宅翻訳やってます。夫と文鳥との生活に奇跡的な誕生をした息子も加わり奮闘しています。


by martha2nd